この記事でわかること

この記事では大まかに
①過去→現在(2022年)の日本の動物愛護法がどう変わったのか罰則も含めた抑えておきたい3つのポイント
②スイスの動物愛護法、動物愛護施設(ティアハイム)について
③日本が見習うべき動物愛護に関する海外の制度
について詳しく説明していきます。
今回の改正で、日本の動物愛護法はどう変わったのかでしょうか?

yuru
実際のところ日本の「動物愛護に関する法律」って、どうなってるんだワン?

かえで
改正はされて、昔に比べると良くなってきてはいるものの、正直なところ日本の動物保護に関する法律は、まだまだ遅れているの。今最も動物愛護に力を入れている国はスイスよ。この記事では、他の国とも比較しながら分かりやすく説明していくわ。

 

現在(2022年)日本の動物愛護法について

日本で動物愛護法が制定されたのは、今から49年前の1973年です。

また、改正は今までに4回されています。

もっとも最も新しい法改正は2019年6月19日に公布されました。

大きなポイントが二つあるので、分かりやすく解説します。

 

①数値規制(飼養管理基準の厳格化)

数値規制の目的は、悪質なブリーダーやペットショップの抑制です。繁殖業者やペットショップなど、動物のプロである第1種動物取扱業者に対して、犬猫の飼養施設の構造、規模、従業員数、環境管理の状況や繁殖の回数などについて、飼育環境について数値を定めるように法改正がされました。

 

 

飼養管理基準の具体例

 

寝床や休息場所となるケージの大きさ

・タテ体長の2倍×ヨコ体長の1.5倍×高さ体高の2倍とする。

運動スペースの確保と運動時間

・ケージサイズの床面積の6倍×高さ体高の2倍の運動スペースを確保し、1日3時間以上は運動スペースに出し、運動させることを義務付ける。

1人につき繁殖犬15頭、販売犬20頭まで飼育可能

・従業員1人あたりにつき、繁殖犬は15頭まで、販売犬は20頭まで飼育可能とする(親と同居している子犬は頭数に含めない)

生涯出産回数は6回まで、メスの交配は6歳まで(満7歳未満)

・ただし、満7歳時点で生涯出産回数が6回未満であることを証明できる場合は、交配は7歳までとする。

また、7歳未満であろうとなかろうと、年齢や出産回数にかかわらず、繁殖に適さない個体は交配を認めない。

 

 

②幼齢犬猫の販売制限(8週齢規制)

 

8週齢規制とは

生後56日(8週)に満たない犬猫の販売を禁止する規定です。

従来までは生後49日(7週)とされていたものから1週間延長されました。

8週齢規制については、幼齢のかわいいうちに高値で売りたいペット関連業界と、幼齢の生体販売に反対する動物愛護団体とでこれまで30年近く激しく議論されてきた問題でした。

8週齢まで母犬及び兄弟犬と共に生活させることで、成長後の問題行動の予防(社会性の習得)、母犬からの免疫力を高め流通過程での感染症を減少させることが認められ、ペット先進国のドイツやアメリカと同じ基準にまで引き上げられました。

ただし残念なことに、日本犬6犬種(柴犬、秋田犬、北海道犬、甲斐犬、紀州犬、四国犬)については「天然記念物の保存」を理由に、ブリーダーからの販売に限り8週齢規制の適用対象外とすることが、動物愛護法の付則に盛り込まれてしまいました。

今後、また改正されることを祈っています。

 

日本の動物愛護法違反の罰則は?

 

従来の法律よりも虐待に関する罰則を厳格化しました。動物をみだりに殺したり傷つけたりする行為には、従来は2年以下の懲役または200万円以下の罰金とされていました。

動物殺傷罪等の厳罰化【 第44条 】は2020年6月から施行されています。

現在の罰則は、以下のとおりです。

動物愛護法違反による罰則
愛護動物をみだりに殺し又は傷つけた場合は、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処されます。また、愛護動物に対し、みだりに、その身体に外傷が生ずるおそれのある暴行を加え、又はそのおそれのある行為をさせること、みだりに、給餌若しくは給水をやめ、酷使し、その健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束し、又は飼養密度が著しく適正を欠いた状態で愛護動物を飼養し若しくは保管することにより衰弱させること、自己の飼養し、又は保管する愛護動物であって疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと、排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であって自己の管理するものにおいて飼養し、又は保管することその他の虐待を行った者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処され、遺棄した者も、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。

 

スイスの動物愛護法について

 

憲法に動物保護の条項を組み入れた世界で最初の国はスイスです。

すべての犬にマイクロチップを埋め込み中央データベースへの登録が義務付けられている欧州唯一の国でもあります。

今やヨーロッパ標準といっていいほど浸透した犬の税金「犬税」を世界で初めて法律に組みこんだのもスイスなんです。

この法律は安易に犬を飼おうとする人を抑制する役割を果たしており、納税を怠ると罰金刑に処されます。

犬税についてもこの記事で詳しく解説していきたいと思います。

 

 

動物保護施設ティアハイムについて

 

スイスとドイツ、どちらの国でも多くの街に「ティアハイム」と呼ばれる動物保護施設が建てられています。

「ティアハイム」とは「動物の家」という意味で、様々な事情で飼い主が手放さなければいけなくなった動物が保護される施設です。

この施設では犬や猫だけでなく、ウサギなどの小動物や爬虫類なども保護され、アニマルポリスによって引き取られた犬たちもここで生活しています。

また、保護するだけでなく里親の募集も行い、ほとんどの動物たちが引き取られていきます。 もし里親が見つからなくても殺処分されるようなことはなく、ティアハイムが最後まで面倒をみます。

 

 

日本が目指すべき海外の制度とは?

 

その見習うべき代表例とも言えるのが、飼い主にワンちゃんの飼い方、しつけ等を学ぶレッスンの受講を義務付けている法律です。

これは以前まで全国的に有効だった制度なのですが、2017年をもって廃止され、現在は一部の州の規制に含まれているだけですので、限定した範囲でのみ適用されています。

ドイツでは、飼育頭数によって増減する「犬税」がペットショップにも課されるため、生体販売を行うペットショップは減っています。 スイスでも日本のような生体展示販売は行なっていないため、犬や猫を求める人々はティアハイムを頼ることになり、保護された動物たちに里親が見つかる好循環を生み出しています。

 

つまり、スイスでは飼い主も愛犬もそれなりの教育を受ける代わりに、ワンちゃんを社会の一員として認め、それに応じた自由を与える政策を整えていた訳です。とても素晴らしい制度だと思ったので、少しご紹介します。

 

 

 

犬を飼う前の理論の受講

犬を初めて飼う人は、犬を正しくケアするためのしつけなど、飼育に不可欠な知識について、最低約4時間の講習を受けることが義務付けられています。

その大変さに犬を飼うことを断念する人も多かったそうです。

また、犬がほえるのを止めさせるために、脅かしたり、ショックを与えることは法律違反となります。

 

飼い始めて1年以内に、しつけの訓練と実技テスト

犬を迎えたら1年以内に、飼い主と犬は1回1時間×4回のしつけの訓練および実技テストを受けるます。合格すると証明書が発行され、経費は約7,000円かかります。犬の飼育経験のある人は、新しい犬を飼う際に実技試験を受けます。

 

飼い始めて一年後に、犬税の徴収

犬を飼い始めたら半年以内に自治体に犬の登録を行ういます。これを受けて飼い始めて1年後に犬税の徴収が開始。猫の飼い主はペットを飼育しても税金を納める必要はないですが、犬の飼い主は犬の登録をしたり、年間のペット所有税として約1万3000円納付しなければならなりません。ただし、盲導犬や災害救助犬などは、税が軽減されている。

2頭め以降はさらに高額になります。(特に都市部では高めに設定されているようです)。

2回目以降の犬税の徴収では、税の支払いと同時に証明書の提示が義務づけられています。登録および犬税の納付を行っていないと罰金を科されます。

 

 

生涯にわたり、フンの処理

スイスでは、犬の糞(ふん)を捨てるための

ポリ袋とゴミ箱が公共のスペースに設置されていますが、

この経費はペット所有税から賄われています。

飼い主は自分で犬のフンを拾って片付けることが

義務づけられており、違反すると罰金約9,000円が課されます。

 

その後、飼えなくなっても

これらにプラスして、ティアハイムに犬を引き取ってもらう場合の飼い主の義務として、

  • マイクロチップが装着されていること
  • 引き取り料金は約5万円

が義務づけられているため、飼いはじめの時点でこれらのことも含んでおかなければなりません。

ワンちゃんの行動範囲が限られている日本と違って、愛犬をどこへでも連れていくことが可能なのは、

スイスがルーズで法的規制が存在しないからではありません。

むしろ、犬の飼育に関する法律は日本よりも厳しく、

飼い主としての自覚に対する要求も高いのです。

 

 

一匹で飼うと法に触れてしまう動物とは?

 

モルモットやウサギ、インコのような

社会性のある動物は、

二匹・羽以上で飼うことがスイスの法律で義務付けられています。

1匹で飼われる猫は、毎日人と接したり他の猫が目に入るようにしなければなりません。

猫を飼う人の多くは、猫が家を自由に出入りできるように猫用窓をつけていたり、

アパートの外には「猫はしご」もスイスのあちこちで見られる光景です。

この法律も、動物目線で考えられた素晴らしい法律ですよね。

やはり、日本よりも動物愛護の国民の意識が進んでいるのは一目瞭然です。

 

 

さいごに

 

日本では、動物は民法では物ですが、動物愛護管理法で「動物は命あるもの」と決まっています。

なので動愛法には、「大切にして傷つけてはいけない」と書いてあります。

ですが、動物先進国と言われる国では、もう一歩進んでいます。

例えば、ドイツやスイスの民法では「動物は物ではない」と定義。

当たり前のことなのですが、日本の民法上当たり前ではないことが現状です。

フランスではかなり前の1976年に「動物は人間と同じく感覚ある存在」。

法律の新しいEUでも「感受性のある生命存在」と定義されています。

この「感覚ある存在」というのが実はとても大きな差なのです。

感覚や感受性があるということは、喜怒哀楽はもちろんのこと感じる心があるということです。

例えば、小さな犬がオークションにかけられ空気穴の開いた

箱に入り空輸されペットショップの店頭へ運ばれたり

長時間の留守番でお散歩にも行けない犬がいたり、現在日本ではそれは問題のない行為なのです。

これを変えていけるのは、日本国民一人一人の意識なのです。

今の現状をしっかりと受け止めることがとても大事なことだと私は思います。

なかなかすぐには変えることは難しいですが、徐々にでも動物先進国に近づいていってくれることを願っています。

 

 

 

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